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【プロが解説】洗濯タグの「P」「F」の違い、知ってる?知らないと大切な服が台無しに!

【プロが解説】洗濯タグの「P」「F」の違い、知ってる?知らないと大切な服が台無しに!

洗濯表示の丸にPやFと書かれたマーク、その意味の違いを正しく理解していますか?これらはドライクリーニングの種類を示す記号で、違いを知らないと大切な服を傷める原因になります。この記事では「P」と「F」の洗浄力や対応素材の違い、家庭洗濯の可否、無視した場合の失敗例までプロが徹底解説。ウールやシルクなどデリケートな衣類を守るための正しい知識を身につけ、クリーニングでの失敗を防ぎましょう。

1. まず結論 洗濯タグの「P」「F」はドライクリーニングの種類を示す記号

お気に入りのセーターやジャケットについている洗濯タグ。そこに書かれた丸の中に「P」や「F」というアルファベットがあるのを見たことはありませんか?これは、家庭での洗濯方法ではなく、クリーニング店で行う「ドライクリーニング」の種類を示す記号です。2016年12月から、日本の洗濯表示は国際規格に合わせた新しいJIS L 0001規格に変わりました。この「P」や「F」の記号は、その新しい洗濯表示の一部です。

つまり、この記号は私たちが直接何かをするための指示ではなく、クリーニング店の専門家が、その衣類に最も適した溶剤を選んで処理するための重要な情報なのです。この違いを知らないまま自己判断で洗濯してしまうと、大切な衣類が縮んだり、風合いが損なわれたりする原因になります。まずは、「P」と「F」がそれぞれ何を示しているのか、基本をしっかり押さえましょう。

1.1 「P」マークが示す意味

丸の中に「P」と書かれたマークは、パークロロエチレン及び石油系溶剤によるドライクリーニングができることを示します。パークロロエチレンは、ドライクリーニングで使用される溶剤の中でも特に洗浄力が高いのが特徴です。そのため、油性の汚れや皮脂汚れなどを強力に落とすことができます。

一般的に、ウールのスーツやコート、ネクタイなど、型崩れを防ぎつつ、しっかり汚れを落としたい衣類によく見られます。洗浄力が強い反面、デリケートな素材や装飾品には影響を与える可能性があるため、クリーニング店では素材やデザインを考慮して溶剤を使い分けます。「P」は、比較的幅広い溶剤に対応できるマークと覚えておくと良いでしょう。

「P」マークの概要
項目 内容
記号の意味 パークロロエチレン及び石油系溶剤によるドライクリーニングが可能
使用できる溶剤 パークロロエチレン、石油系溶剤
洗浄力 強い(特に油性汚れに対して)
主な対象衣類 ウールのスーツ、コート、スラックス、ネクタイなど

1.2 「F」マークが示す意味

一方、丸の中に「F」と書かれたマークは、石油系溶剤によるドライクリーニングができることを示します。「P」マークとは異なり、使用できる溶剤が石油系のものに限定されます。石油系溶剤は、パークロロエチレンに比べて洗浄力が穏やかで、衣類へのダメージが少ないのが特徴です。

そのため、カシミヤやシルクといったデリケートな素材や、ビーズやスパンコールなどの装飾が施されたデザイン性の高い衣類、風合いを大切にしたい服などに多く用いられます。「F」マークの衣類に、より強力なパークロロエチレン溶剤を使用することはできないため、クリーニング店ではこの指示を厳密に守って洗浄を行います。衣類を優しく、安全にクリーニングするための記号が「F」マークです。

「F」マークの概要
項目 内容
記号の意味 石油系溶剤によるドライクリーニングが可能
使用できる溶剤 石油系溶剤のみ
洗浄力 穏やか
主な対象衣類 カシミヤ・アンゴラなどの獣毛ニット、シルク製品、レーヨン、装飾付きの衣類など

2. 【比較】洗濯タグの「P」と「F」の具体的な違いとは

洗濯表示の「P」と「F」は、どちらもドライクリーニングが可能であることを示す記号ですが、その内容は大きく異なります。この違いを理解しないままクリーニングに出してしまうと、大切な衣類が思わぬダメージを受ける可能性があります。ここでは、両者の具体的な違いを「使用する溶剤」「洗浄力」「対応できる素材」の3つの観点から、分かりやすく比較解説します。

2.1 違い1 使用する溶剤の種類

「P」と「F」の最も根本的な違いは、クリーニングに使用できる「溶剤」の種類です。「P」マークはより強力な溶剤を含む幅広い選択肢があるのに対し、「F」マークは使用できる溶剤が限定されています。

  • Pマーク:パークロロエチレン(テトラクロロエチレンとも呼ばれます)または石油系溶剤を使用できます。パークロロエチレンは非常に洗浄力が高い有機溶剤です。
  • Fマーク:石油系溶剤のみ使用できます。パークロロエチレンは使用できず、衣類への負担が比較的少ない穏やかな溶剤で洗浄されます。

この溶剤の違いが、次の洗浄力や対応素材の違いに直結します。

「P」と「F」の使用溶剤の違い
マーク 使用できる溶剤
ドライクリーニング Pマーク(P) パークロロエチレン、石油系溶剤
ドライクリーニング Fマーク(F) 石油系溶剤のみ

2.2 違い2 洗浄力の強さ

使用する溶剤が異なるため、当然ながら洗浄力にも差が生まれます。どちらが良い・悪いということではなく、汚れの種類や衣類の状態によって適した方法が変わってきます。

「P」は洗浄力が強く、油性の汚れに非常に効果的です。スーツの襟元に付着する皮脂汚れ、食べこぼしの油ジミ、ファンデーションなどの化粧品の汚れといった、家庭洗濯では落としにくい頑固な汚れを分解する力に優れています。

一方、「F」は洗浄力が穏やか(マイルド)です。強い溶剤を使わないため、衣類への負担が少ないのが最大のメリット。洗浄力は「P」に劣りますが、デリケートな衣類の風合いを損なうリスクを最小限に抑えながら、日常的な汚れを落とすことができます。

「P」と「F」の洗浄力の違い
マーク 洗浄力の強さ 得意な汚れ 特徴
ドライクリーニング Pマーク(P) 強い 油性の汚れ(皮脂、油ジミ、化粧品など) 頑固な汚れをしっかり落とせる
ドライクリーニング Fマーク(F) 穏やか 比較的軽い汚れ全般 衣類への負担が少なく、風合いを保ちやすい

2.3 違い3 対応できる衣類の素材

洗浄力の違いは、そのまま「対応できる衣類の素材」の違いにつながります。衣類の素材や装飾に合わせて、メーカーが最適なクリーニング方法を「P」か「F」で指定しています。

「P」は、溶剤に耐えられる丈夫な素材、例えばウール素材のスーツやコート、ポリエステルやナイロンといった化学繊維の衣類に多く見られます。ただし、洗浄力が強い分、ビーズやスパンコールなどの装飾品、特殊なプリントが施された衣類は、溶剤によって溶けたり剥がれたりする危険性があるため注意が必要です。

「F」は、デリケートな素材に使われることがほとんどです。カシミヤやアンゴラといった高級獣毛、光沢や質感が命であるシルクやレーヨン、そして装飾品が付いたデザイン性の高い「おしゃれ着」などが代表例です。「P」の強力な溶剤では縮みや風合いの変化が起きてしまう可能性のある衣類を守るために、「F」が指定されています。

「P」と「F」の対応素材の違い
マーク 適した素材の例 注意が必要なもの
ドライクリーニング Pマーク(P) ウール、ポリエステル、ナイロン、アクリルなど比較的丈夫な素材 接着剤を使用した装飾品(ビーズ、ラインストーン)、一部のプリント加工
ドライクリーニング Fマーク(F) カシミヤ、アンゴラ、シルク、レーヨンなど繊細な素材、装飾付きの衣類 特にありませんが、タグの指示に必ず従うことが重要です

3. 「P」や「F」マークの付いた服は家で洗濯できるのか

お気に入りのセーターやワンピースに「P」や「F」のドライクリーニングマークが付いていると、「これって家で洗えないの?」と疑問に思いますよね。結論から言うと、これらのマークが付いた衣類を家庭で洗濯するのは、大きなリスクが伴うため、基本的には避けるべきです。なぜなら、これらの衣類は水に弱く、家庭用の洗濯機や洗剤では素材の風合いを損ねたり、修復不可能なダメージを与えてしまったりする可能性が非常に高いからです。

この章では、なぜクリーニング店が推奨されるのか、そしてどうしても家庭で洗いたい場合の判断基準について、詳しく解説していきます。

3.1 原則としてクリーニング店の利用を推奨

「P」や「F」マークは、そもそも「水洗い」ではなく、石油系溶剤などの「有機溶剤」を使ったドライクリーニングに適していることを示す記号です。水に濡れると縮んだり、型崩れしたり、色がにじんだりするデリケートな素材(ウール、シルク、カシミヤ、レーヨンなど)が使われていることがほとんどです。

クリーニング店では、素材や汚れの種類に応じて専門の溶剤や機械を使い分け、衣類への負担を最小限に抑えながら洗浄します。これは、家庭用の洗濯機や「おしゃれ着洗い用」とされる中性洗剤では決して真似のできないプロの技術です。

安易に「おしゃれ着洗いコースなら大丈夫だろう」と考えて洗濯してしまうと、二度と着られない状態になってしまうことも少なくありません。大切な衣類を長く愛用するためにも、ドライクリーニングマークのある服は、原則として信頼できるクリーニング店に任せるのが最も安全で確実な方法です。

3.2 桶のマーク(家庭洗濯)も必ず確認しよう

衣類の洗濯表示は、ひとつのマークだけでなく、複数の記号が組み合わさって表示されています。ドライクリーニングマークが付いているからといって、すぐに「家では絶対に洗えない」と判断する前に、必ず「家庭洗濯」を示す桶のマークも確認しましょう。この組み合わせによって、洗濯の可否が明確になります。

具体的には、以下の2つのパターンを覚えておくことが重要です。

記号の組み合わせ 意味と対応方法
ドライマーク(P/F) + 桶に×印

【家庭での洗濯は絶対にNG】
この組み合わせは、「家庭での水洗いはできません。ドライクリーニングをしてください」という最も明確な指示です。水に触れること自体が素材にダメージを与えるため、手洗いであっても絶対に避けてください。必ずクリーニング店に依頼しましょう。

ドライマーク(P/F) + 桶のマーク(手洗いなど)

【条件付きで家庭洗濯も可能だが、推奨はクリーニング】
この表示は、「ドライクリーニングが最適ですが、表示されている方法(例:手洗い、洗濯機で非常に弱い洗濯)であれば家庭でも洗えます」という意味です。しかし、家庭での洗濯はあくまで自己責任となります。洗濯機の性能や洗剤の選び方、干し方ひとつで失敗するリスクは常に伴います。特に高価な衣類や思い入れのある服の場合は、プロであるクリーニング店に任せることを強くおすすめします。

このように、洗濯表示全体を正しく読み解くことが、衣類を長持ちさせるための第一歩です。ドライクリーニングマークを見つけたら、隣にある桶のマークもセットで確認する習慣をつけましょう。

4. 知らないと危険 「P」「F」マークを無視して洗濯した時の失敗例

「ドライクリーニング推奨の服だけど、少しの汚れだから家で洗ってしまおう」――そんな風に考えたことはありませんか?しかし、その安易な判断が、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。「P」や「F」のドライクリーニングマークは、その衣類が水を使った洗濯に耐えられないデリケートな素材で作られていることを示しています。水や家庭用洗剤、洗濯機の物理的な力が、繊維に深刻なダメージを与えてしまうのです。ここでは、マークを無視して洗濯してしまった場合の、代表的な失敗例を具体的に解説します。

4.1 ウールやカシミヤの縮みや型崩れ

冬物のセーターやコートに多く使われるウールやカシミヤ。これらの動物性繊維を家庭で洗濯すると、まるで子供服のように縮んでしまうことがあります。これは、繊維の表面が「スケール」と呼ばれるうろこ状の組織で覆われているためです。水に濡れて揉まれると、このスケールが絡み合い、繊維が元に戻らなくなる「フェルト化」という現象が起きます。これが、縮みの正体です。

一度硬く縮んでしまったウール製品は、プロでも元に戻すのは非常に困難です。お気に入りのコートのシルエットが崩れたり、セーターの袖が短くなって着られなくなったりと、一回の洗濯で衣類の寿命を絶ってしまう典型的な失敗例と言えるでしょう。

4.2 シルクやレーヨンの風合いが損なわれる

光沢が美しいシルクのブラウスや、とろみのあるレーヨンのワンピースなども、家庭での洗濯は絶対に避けるべき衣類です。これらの素材は水に非常に弱く、濡れると繊維の強度が著しく低下します。その状態で洗濯機の力が加わると、繊維が毛羽立ったり、摩擦によって生地表面が白っぽくなったり(白化現象)してしまいます。

その結果、シルク特有のなめらかな肌触りや上品な光沢が失われ、ゴワゴワとした質感に変わってしまいます。また、極端なシワが発生し、アイロンをかけても元通りの美しいドレープ性が戻らないことも少なくありません。

4.3 色落ちや色移りの発生

ドライクリーニングを前提として作られた衣類は、水に弱い染料が使われていることがあります。家庭用のアルカリ性洗剤は洗浄力が強い分、こうした染料を溶かし出してしまうリスクが高いのです。特に、濃い色のジャケットや柄物のスカートなどを洗ってしまうと、色がにじんで柄がぼやけたり、全体的に色あせた印象になったりします。

さらに危険なのが「色移り」です。溶け出した染料が、一緒に洗った他の衣類に付着し、お気に入りの白いTシャツがまだら模様に染まってしまうといった悲劇も起こり得ます。大切な一着だけでなく、他の衣類まで犠牲にしてしまう可能性があることを忘れてはいけません。

これらの失敗例を素材別にまとめると、以下のようになります。

素材の例 起こりうる主なトラブル 具体的な失敗例
ウール、カシミヤ、アンゴラ 縮み、型崩れ、フェルト化 セーターが子供服サイズになる。コートのシルエットが崩れて着られなくなる。
シルク、レーヨン、キュプラ 風合いの変化、光沢の消失、白化、シワ ブラウスの光沢がなくなり白っぽくなる。ワンピースがゴワゴワになる。
皮革、毛皮製品 硬化、ひび割れ、変色 レザージャケットが硬くなり着心地が悪くなる。ファーの毛が抜ける。
濃色・柄物の衣類全般 色落ち、色あせ、色移り 濃い色のパンツの色が抜け、一緒に洗ったシャツに色が移ってしまう。

このように、洗濯表示は衣類の素材や染色方法に合わせた最適なお手入れ方法を示す、いわば「取扱説明書」です。大切な衣類を長く愛用するためにも、必ず表示を確認し、適切な方法でお手入れすることを心がけましょう。

5. 「P」「F」と一緒に覚えたいクリーニングの洗濯タグ「W」

ドライクリーニングを示す「P」や「F」マークと合わせて、ぜひ覚えておきたいのが「W」のマークです。これは「ウェットクリーニング」を示す記号で、衣類ケアの選択肢をさらに広げてくれる重要な情報です。「P」「F」が油性溶剤を使うのに対し、「W」は水を使うクリーニング方法という大きな違いがあります。この3つの記号を理解することで、より衣類の状態に合ったメンテナンスが可能になります。

5.1 「W」はウェットクリーニングのマーク

洗濯表示の丸の中に「W」と書かれたマークは、「ウェットクリーニング」ができることを示します。ウェットクリーニングとは、クリーニング店が専門的な知識と技術を駆使して行う「プロによる水洗い」のことです。

家庭で行う水洗いとは全く異なり、本来水洗いできないデリケートな衣類を、特殊な洗剤や機械を使って、型崩れや縮み、風合いの変化を最小限に抑えながら洗浄する高度な技術です。ドライクリーニングでは落としきれない汗や食べこぼしといった「水溶性の汚れ」を落とすのに非常に効果的です。

「P」や「F」マークと同様に、「W」マークにも強さを示す記号が付記されていることがあります。

記号 意味
ウェットクリーニングができる 通常のウェットクリーニングができる
弱いウェットクリーニングができる 弱い操作によるウェットクリーニングができる
非常に弱いウェットクリーニングができる 非常に弱い操作によるウェットクリーニングができる
ウェットクリーニング禁止 ウェットクリーニングはできない

※洗濯表示の画像は消費者庁のウェブサイトに掲載されているものを想定しています。

このように、同じウェットクリーニングでも、衣類の素材や作りに合わせて洗浄の強さが細かく指定されています。特にデリケートな衣類ほど、下線が増えてより丁寧な処理が求められると覚えておきましょう。

5.2 ドライクリーニングとの使い分け

ドライクリーニング(P・F)とウェットクリーニング(W)は、それぞれ得意な汚れの種類が異なります。衣類の状態や汚れの原因によって最適な方法を選ぶことが、衣類を長持ちさせる秘訣です。

具体的にどのような違いがあるのか、下の表で比較してみましょう。

項目 ドライクリーニング(P・F) ウェットクリーニング(W)
得意な汚れ 油溶性の汚れ
(皮脂、ファンデーション、チョコレート、油性ペンのシミなど)
水溶性の汚れ
(汗、ジュース、しょうゆ、ワインのシミなど)
使用する洗浄液 有機溶剤(石油系やパークロロエチレンなど) 水と特殊な洗剤・助剤
衣類への影響 型崩れや縮みが起きにくい。風合いを保ちやすい。 専門技術で影響を最小限に抑えるが、素材によってはリスクが伴う。
主な対象衣類 ウールのスーツ、カシミヤのコート、シルクのブラウス、革製品など 汗をかいた夏用スーツ、ダウンジャケット、学生服、シミが付いたドレスなど

例えば、夏場に着用して汗をたくさん吸い込んだスーツは、ドライクリーニングで皮脂汚れを落とした後、さらにウェットクリーニングで汗の成分を洗い流す「ダブルクリーニング」を依頼するのが理想的です。クリーニング店でよく見かける「汗抜き加工」や「さっぱり仕上げ」といったオプションは、このウェットクリーニングを指していることが多くあります。

どちらの方法が良いか迷った際は、クリーニング店のカウンターで「何の汚れが付いたか」を具体的に伝えましょう。プロの目で見て、衣類と汚れに最も適したクリーニング方法を提案してくれます。

6. 大切な服を守るために クリーニング店へ出す際のポイント

洗濯表示の「P」や「F」マークが付いたデリケートな衣類は、クリーニング店に任せるのが基本です。しかし、ただ預けるだけでは、最高の仕上がりは期待できません。ここでは、大切な服をトラブルから守り、より美しく仕上げてもらうための重要なポイントを5つご紹介します。クリーニング店とのコミュニケーションを円滑にすることが、衣類を長持ちさせる秘訣です。

6.1 汚れやシミの種類を事前に伝える

クリーニング店に衣類を預ける際、最も重要なのが「汚れやシミに関する情報提供」です。プロはシミ抜きの専門家ですが、原因がわかっている方がより的確で迅速な処置ができます。シミは時間の経過とともに酸化し、繊維に固着してしまうため、「いつ、何が付いたのか」をできるだけ正確に伝えましょう。

例えば、同じように見えるシミでも、原因によって落とし方が全く異なります。

シミの種類 伝えるべき情報(例) 家庭でのNG対応
コーヒー・紅茶・ワイン(水溶性) 「昨日の夜、赤ワインをこぼしてしまいました。」 慌てておしぼりで強くこする(シミが広がり、生地が傷む原因に)
ミートソース・口紅(油性) 「ランチでミートソースがはねてしまいました。」 水だけで落とそうとする(油分が水を弾き、汚れが広がるだけ)
ボールペン・泥(不溶性) 「ボールペンのインクが擦れて付いてしまいました。」 除光液など自己判断で薬品を使う(変色や色落ちのリスク大)

原因がわからない場合でも、「1週間ほど前に付いたようだが、何による汚れかわからない」と正直に伝えましょう。自分でシミ抜きを試みた場合は、その方法(使用した洗剤など)も必ず申告してください。余計な化学反応を防ぎ、プロの仕事を助けることにつながります。

6.2 付属品や装飾品は外せるか確認する

スーツのボタン、コートのベルト、ブラウスの飾りなど、衣類には様々な付属品や装飾品が使われています。これらはクリーニングの工程で破損したり、紛失したりするリスクが伴います。

特に注意が必要なのは、以下のものです。

  • デザイン性の高いボタン(貝ボタン、くるみボタンなど)
  • 革や合成皮革製のバックル、ベルト
  • ビーズやスパンコール、ラインストーンなどの装飾
  • 取り外し可能なファーやフード

自分で取り外せるものは、預ける前に外しておくのが最も安全です。外せない場合は、受付時に店員にその旨を伝え、破損のリスクについて確認しましょう。優良なクリーニング店では、ボタンをアルミホイルで保護するなどの対策を講じてくれますが、万が一の際の補償範囲についても事前に確認しておくと安心です。

6.3 ポケットの中身は必ず空にする

基本的なことですが、意外と忘れがちなのがポケットの中身の確認です。ポケットに物が入ったままクリーニングに出すと、深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。

  • ティッシュやレシート:溶けて繊維に絡みつき、衣類全体に付着してしまいます。取り除くのは非常に困難です。
  • ボールペンや口紅:キャップが外れると、インクや油分が漏れ出し、預けた衣類だけでなく、他のお客様の衣類まで汚染してしまう大惨事につながります。
  • 現金やカード類:紛失のリスクがあります。クリーニング店は洗浄前に検品しますが、自己責任で管理するのが原則です。

クリーニングに出す直前に、すべてのポケットを裏返して確認する習慣をつけましょう。小さな一手間が、大きな後悔を防ぎます。

6.4 衣類の状態(ほつれ・破れ)も申告する

目立たない小さなほつれや生地の擦り切れも、クリーニングに出す前に必ず申告しましょう。業務用の洗濯機や乾燥機はパワフルなため、小さなダメージがクリーニング工程で一気に広がってしまうことがあります。「クリーニングに出したら破れた」というトラブルは、元々の衣類の状態が原因であることも少なくありません。

受付時に、「袖口に少しほつれがある」「ボタンが緩んでいる」といった具体的な状態を伝えることで、店側も注意して作業してくれます。また、責任の所在を明確にし、お互いに気持ちよく利用するためにも、事前の状態共有は非常に重要です。店舗によっては、有料でボタン付けや簡単な補修(リペア)を同時に受け付けてくれる場合もあります。

6.5 仕上がりの希望があれば具体的に伝える

クリーニングは「汚れを落とす」だけが目的ではありません。大切な衣類の風合いを保ち、美しく仕上げることも重要な役割です。もし仕上がりにこだわりがあるなら、遠慮せずに伝えましょう。

例えば、以下のような要望です。

  • スーツのスラックスのセンタープレス(折り目)を、くっきりつけてほしい/つけないでほしい。
  • カシミヤのセーターの風合いを、できるだけ柔らかく、ふんわりと仕上げてほしい。
  • ダウンジャケットのボリューム感を損なわないようにしてほしい。

また、撥水加工や防虫・防カビ加工、折り目加工といったオプションサービスもあります。衣類の使用目的や保管状況に合わせて相談してみるのも良いでしょう。プロとの対話を通じて、自分の衣類に最適なメンテナンス方法を見つけることが、お気に入りの一着を長く愛用するための鍵となります。

7. まとめ

洗濯表示の「P」と「F」は、クリーニング店で行うドライクリーニングの種類を示す記号です。「P」は洗浄力が強く、「F」はよりデリケートな衣類に使われる石油系溶剤を指します。これらのマークがある衣類を家庭で洗濯すると、縮みや型崩れ、風合いを損なう原因となるため、原則としてプロに任せるのが最善です。大切な衣類を長く愛用するために、洗濯タグの意味を正しく理解し、表示に従った適切なお手入れを心がけましょう。