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長すぎるのは逆効果?「つけ置き洗い」って結局どのくらい置くのが正解?を洗濯のプロが徹底解説

長すぎるのは逆効果?「つけ置き洗い」って結局どのくらい置くのが正解?を洗濯のプロが徹底解説

Yシャツの黄ばみやタオルの臭い対策に効果的な「つけ置き洗い」。でも、どのくらいの時間置けば良いか迷いませんか?実は、つけ置きは長ければ良い訳ではなく、30分から2時間が基本。長く置きすぎると汚れが再付着し、逆効果になることもあります。この記事では、洗濯のプロが汚れや衣類に応じた最適な時間や、効果を最大化するコツ、正しい手順まで、あなたの疑問にすべてお答えします。

1. 【結論】つけ置き洗いで置く時間は30分から2時間が基本

「つけ置き洗い」と聞くと、一晩中浸しておけば汚れがごっそり落ちるようなイメージがあるかもしれませんが、実はそれは間違いです。つけ置き洗いで衣類を置く時間の基本は、30分から2時間程度です。これは、洗剤に含まれる酵素が最も活発に働き、汚れを分解するのに十分な時間だからです。

洗濯用洗剤の多くは、タンパク質や皮脂を分解する「酵素」の力で汚れを落とします。この酵素が効果を発揮するピークが、お湯に溶けてから30分~2時間ほど。逆に、これ以上長く浸しすぎると、後述するようなデメリットが発生し、かえって衣類を傷めたり汚してしまったりする原因になります。

1.1 汚れや衣類によって最適な時間は変わる

「30分から2時間」はあくまで基本の目安です。実際には、落としたい汚れの種類や衣類の素材によって、最適なつけ置き時間は異なります。すべての衣類を同じ時間つけ置きするのではなく、状態に合わせて調整することが、衣類をきれいに長持ちさせる秘訣です。

具体的な汚れや衣類別の時間は後の章で詳しく解説しますが、まずは基本的な目安を下の表で確認してみましょう。

汚れや衣類の種類 つけ置き時間の目安
軽い皮脂汚れ・汗の臭い 30分~1時間
Yシャツの襟袖の黒ずみ・黄ばみ 1時間~2時間
食べこぼし・調味料のシミ 1時間程度
デリケートな衣類(おしゃれ着) 30分以内

このように、汚れが軽いものや生地が繊細なものは短めに、頑固な汚れには少し長めにつけ置きするのが効果的です。

1.2 長すぎるつけ置きは逆効果になることも

「大は小を兼ねる」と考え、一晩中つけ置きしてしまった経験はありませんか?実は、必要以上の長時間のつけ置きは、汚れ落ちを良くするどころか、さまざまなトラブルを引き起こす逆効果になりかねません。

洗剤液から一度はがれた汚れが、時間が経つにつれて再び衣類に付着してしまう「再汚染(逆汚染)」という現象がその代表例です。また、長時間湿った状態が続くことで雑菌が繁殖し、嫌な生乾き臭の原因になることもあります。生地への負担も大きくなるため、特にデリケートな衣類は注意が必要です。

大手洗剤メーカーである花王株式会社の公式サイトでも、つけ置き時間は汚れに応じて30分~2時間程度が推奨されており、長時間のつけ置きは避けるべきとされています。正しい時間を守ることが、つけ置き洗いの効果を最大限に引き出すための重要なポイントなのです。

参考: 【つけおき洗い】効果的な時間や温度、洗剤の量は?基本お洗濯のコツ |花王株式会社

2. つけ置き洗いの時間が長すぎる場合のデメリット

「汚れをしっかり落としたいから」と、つい長くつけ置きしてしまった経験はありませんか?実は、つけ置き洗いは時間が長ければ長いほど効果的というわけではありません。むしろ、推奨される時間以上つけ置きすると、様々なデメリットを引き起こす可能性があります。良かれと思ってやったことが、衣類を傷めたり、かえって汚してしまったりする原因になりかねないのです。ここでは、つけ置き時間が長すぎることによる3つの主なデメリットを詳しく解説します。

2.1 汚れの再付着(逆汚染)が起こる

つけ置き洗いで最も注意したいのが「逆汚染(ぎゃくおせん)」です。逆汚染とは、一度衣類から剥がれ落ちて水に溶け出した汚れが、再び衣類に付着してしまう現象のことを指します。

つけ置きを始めると、洗剤の力で汚れが繊維から引き剥がされます。しかし、洗浄液の中に汚れが飽和し、洗剤の洗浄力が時間とともに低下してくると、汚れを水中に留めておく力が弱まります。その結果、剥がれたはずの皮脂汚れや泥、ホコリなどが、きれいな部分や他の衣類に再付着してしまうのです。

特に、汚れがひどい作業着と白いTシャツを一緒に長時間つけ置きするようなケースでは、Tシャツ全体が黒ずんでしまうことがあります。これは、まさに逆汚染が原因です。せっかく汚れを落とすためのつけ置き洗いが、衣類を汚す原因になっては本末転倒です。汚れ落ちの効果を最大化するためにも、適切な時間を守ることが非常に重要です。

2.2 雑菌が繁殖して嫌な臭いの原因に

つけ置きしている洗浄液の中は、雑菌にとって絶好の繁殖環境となり得ます。その理由は主に2つあります。

  1. 雑菌のエサが豊富:洗浄液には、衣類から溶け出した皮脂、汗、食べこぼしなどの汚れが豊富に含まれています。これらは雑菌にとって格好の栄養源となります。
  2. 雑菌が好む温度:つけ置きに効果的な40℃前後のお湯は、生乾き臭の原因菌である「モラクセラ菌」などが最も活発に繁殖する温度帯でもあります。

つけ置き開始直後は洗剤の除菌・抗菌効果が働いていますが、時間が経つにつれてその効果は薄れていきます。その結果、洗浄液の中で雑菌が爆発的に増殖し、洗濯しても取れない嫌な生乾き臭や部屋干し臭を衣類に定着させてしまうのです。特に、一晩中つけっぱなしにするのは、意図的に雑菌を培養しているようなもの。清潔にするつもりが、かえって不衛生な状態を招いてしまうため、絶対に避けるべきです。

2.3 衣類の生地を傷めてしまう

長時間水に浸す行為は、衣類の繊維そのものにダメージを与え、寿命を縮める原因となります。

洗剤に含まれる「酵素」は、タンパク質や皮脂を分解して汚れを落としますが、長時間作用しすぎると、ウールやシルクといったタンパク質でできた動物性繊維そのものを傷めてしまう可能性があります。また、酸素系漂白剤も同様で、規定時間以上使用すると繊維を脆くしたり、色柄物の色素まで分解して色あせを引き起こしたりすることがあります。

さらに、水に長時間浸かることで繊維が水分を吸って膨潤(ぼうじゅん)し、乾いたときに型崩れや縮みを引き起こすことも。特にデリケートな素材ほど、その影響は顕著に現れます。大切なおしゃれ着や風合いを保ちたい衣類ほど、長時間のつけ置きは避けるべきです。

長時間のつけ置きが引き起こす生地へのダメージを以下の表にまとめました。

ダメージの種類 主な原因 特に注意が必要な衣類
繊維の劣化・風合いの悪化 洗剤の酵素や漂白剤の過剰な作用 ウール、シルク、カシミヤなどの動物性繊維
色落ち・変色 酸素系漂白剤の長時間作用、染料の流出 色の濃い衣類、柄物、デニム製品
型崩れ・縮み 長時間の浸水による繊維の膨潤 ニット、レーヨン、おしゃれ着全般
付属品の劣化 漂白剤と金属パーツ(ボタン、ファスナー等)の化学反応 金属製の付属品が付いた衣類

このように、つけ置き時間が長すぎると「逆汚染」「雑菌繁殖」「生地の傷み」という3つの大きなデメリットがあります。汚れ落ちの効果をしっかり得つつ、衣類を大切に扱うためにも、必ず推奨される時間を守るようにしましょう。

3. 【汚れの種類別】つけ置き洗いで置く時間の正解

つけ置き洗いの時間は、汚れの種類や度合いによって調整するのが正解です。なぜなら、汚れの成分(油性、水性、タンパク質など)によって、洗剤が分解するのにかかる時間が異なるためです。ここでは代表的な汚れの種類別に、最適なつけ置き時間と効果的な洗い方のポイントを解説します。

3.1 軽い皮脂汚れや汗の臭い

Tシャツや肌着、パジャマなどに付着する日常的な皮脂汚れや、汗による軽い臭いが気になる場合は、30分から1時間程度のつけ置きが基本です。皮脂や汗は比較的分解されやすい汚れのため、長時間つけ置く必要はありません。むしろ、長すぎると雑菌が繁殖する原因にもなるため、短時間で済ませるのが衛生的です。

特に夏場の汗をかいた衣類は、放置せずにその日のうちにサッとつけ置きする習慣をつけるだけで、黄ばみや頑固な臭いの予防に繋がります。

3.2 Yシャツの襟袖の黒ずみや黄ばみ

Yシャツの襟や袖に付着した黒ずみや黄ばみは、蓄積された皮脂汚れが酸化した頑固な汚れです。そのため、少し長めの1時間から2時間を目安につけ置きしましょう。汚れが特にひどい場合でも、最長で3時間程度に留めてください。

これらの汚れを効果的に落とすには、つけ置き前の「予洗い」が非常に重要です。以下の手順を試してみてください。

  1. 襟や袖の汚れた部分をぬるま湯で濡らす。
  2. 固形石鹸(ウタマロ石けんなど)を直接こすりつけ、軽くもみ洗いする。
  3. 石鹸の泡がついたまま、酸素系漂白剤を溶かしたぬるま湯につけ置く。

このひと手間を加えることで、洗剤の力が直接頑固な汚れに作用し、つけ置きの効果が格段にアップします。

3.3 食べこぼしや調味料のシミ

食べこぼしや調味料のシミは、ついたらすぐに対処するのが鉄則です。シミの種類によって適切な対応が異なるため、以下の表を参考にしてください。つけ置き時間は、シミが付いてからの時間にもよりますが、30分から1時間程度が目安です。

シミの種類 効果的な対処法と注意点 つけ置き時間の目安
醤油・ソース・コーヒーなど(水溶性) すぐにティッシュなどで叩いて水分を吸い取り、液体洗剤の原液を直接塗布してからつけ置きします。 30分程度
ミートソース・カレー・ドレッシングなど(油溶性) 油分を先に分解することが重要です。食器用洗剤をシミに直接つけて軽くもみ、油分を浮かせてからつけ置き洗いします。 30分~1時間
牛乳・卵・アイスクリームなど(タンパク質) 熱いお湯は絶対に使用しないでください。タンパク質が熱で固まり、シミが落ちなくなります。必ず水か30℃以下のぬるま湯でつけ置きしましょう。 30分~1時間

時間が経ってしまったシミは、繊維の奥に染み込んで落ちにくくなります。シミに気づいたら、できるだけ早く応急処置とつけ置き洗いを行うことが大切です。

3.4 泥汚れや血液の汚れ

泥や血液は家庭での洗濯で特に落としにくい汚れですが、正しい手順を踏めばきれいにすることができます。これらの汚れは他の汚れとは性質が大きく異なるため、専用の対処が必要です。

3.4.1 泥汚れ(不溶性の汚れ)

泥汚れは洗剤で溶けない「不溶性」の汚れです。そのため、いきなり水で濡らすのは逆効果。泥の粒子が繊維の奥に入り込んでしまいます。

  1. まずは衣類を完全に乾かします。
  2. 乾いたら、歯ブラシなどで優しく叩き、繊維から泥や砂をできる限りかき出します。
  3. その後、固形石鹸(ウタマロ石けんなど)で汚れた部分をしっかりもみ洗いします。
  4. 石鹸で洗った後、洗剤を溶かしたぬるま湯に1時間から2時間つけ置きします。

この「乾かして、かき出す」という前処理が、泥汚れを落とす最大のポイントです。

3.4.2 血液の汚れ(タンパク質の汚れ)

血液の主成分はタンパク質です。食べこぼしのシミと同様、お湯で洗うと血液が固まってしまい、絶対に落ちなくなります。必ず「水」または「30℃以下のごくぬるま湯」を使用してください。

つけ置き時間の目安は30分から1時間です。時間が経っていない血液であれば、水でつまみ洗いするだけでもある程度落ちます。落ちない場合は、液体洗剤やセスキ炭酸ソーダを溶かした水につけ置きするのが効果的です。大手洗剤メーカーの花王の公式サイトでも、血液のシミには水を使うよう推奨されています。

時間が経ってしまった血液のシミには、液体タイプの酸素系漂白剤を直接塗布してから、水でつけ置きする方法を試してみてください。

4. 【衣類別】つけ置き洗い時間の注意点

汚れの種類だけでなく、衣類の種類や素材によってもつけ置き洗いの最適な時間は異なります。生地を傷めたり、色落ちさせたりしないためにも、衣類の特性に合わせた時間調整が重要です。ここでは、代表的な衣類ごとのつけ置き時間の目安と注意点を詳しく解説します。

一目でわかるように、衣類別のつけ置き時間を表にまとめました。

衣類の種類 つけ置き時間の目安 ポイント・注意点
普段着(Tシャツ・肌着など) 30分~1時間 丈夫な素材が多いが、プリント部分は裏返す。長時間は色褪せの原因に。
タオル・靴下 1時間~2時間 臭いや雑菌が気になる場合は少し長めに。酸素系漂白剤の併用が効果的。
デリケートな衣類(おしゃれ着) 15分~30分 洗濯表示を確認。30℃以下の水と中性洗剤を使用し、短時間で済ませる。

4.1 普段着(Tシャツや肌着など)

綿やポリエステルなどで作られたTシャツ、肌着、パジャマといった普段着は、比較的丈夫なものが多く、つけ置き洗いに適しています。主な汚れは皮脂や汗なので、そこまで長い時間つけ置く必要はありません。

つけ置き時間は30分から長くても1時間程度を目安にしましょう。これだけで十分に汗の臭いや軽い皮脂汚れを落とすことができます。ただし、Tシャツにプリントや装飾がある場合は注意が必要です。プリント部分が剥がれたり、色褪せたりするのを防ぐため、衣類を裏返してからつけ置きするのがおすすめです。

4.2 タオルや靴下

タオルや靴下は、雑菌が繁殖しやすく、嫌な臭いや頑固な黒ずみが発生しやすいアイテムです。特に、使い古したタオルの生乾き臭や、靴下のつま先・かかとの黒ずみには、つけ置き洗いが非常に効果的です。

時間は1時間から2時間を目安に、普段着より少し長めにつけ置きするのがおすすめです。このとき、消臭・除菌効果のある酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)を洗剤と一緒に入れると、よりスッキリと洗い上がります。ただし、2時間を超えるつけ置きは、かえって雑菌が繁殖する原因にもなるため避けてください。

4.3 デリケートな衣類(おしゃれ着)

ウールやシルク、レーヨンといったデリケートな素材や、レースやビーズなどの装飾がついた「おしゃれ着」は、つけ置き洗いに最も注意が必要な衣類です。間違った方法で行うと、縮みや型崩れ、風合いを損なう原因になります。

まず、必ず洗濯表示を確認し、「家庭洗濯」や「手洗い」のマークがあるかチェックしましょう。「水洗い不可」のものはつけ置き洗いもできません。

つけ置き洗いができる場合でも、以下の点を必ず守ってください。

  • 洗剤:おしゃれ着洗い用の中性洗剤(エマール、アクロンなど)を使う。
  • 水温:30℃以下のぬるま湯か水を使う。高温は絶対にNGです。
  • 時間:15分から30分程度の短時間で済ませる。

生地を傷めないよう、強く揉んだりこすったりせず、洗剤液の中で優しく揺らす程度にしましょう。つけ置き後は、洗濯機の「手洗いコース」や「ドライコース」で洗うか、優しく押し洗いしてください。

4.4 色柄物と白い衣類は分けるのが基本

これはすべてのつけ置き洗いに共通する大原則です。色移りを防ぐため、白い衣類と色柄物は必ず分けてつけ置きしてください。特に、購入したばかりの濃い色の衣類やジーンズは染料が落ちやすいため、単独で洗うか、事前に色落ちテストを行うことを強くおすすめします。

面倒に感じるかもしれませんが、この一手間をかけることで、白いシャツがくすんだり、お気に入りの服に色が移ってしまったりする悲劇を防げます。衣類を長くきれいに保つためにも、必ず守るようにしましょう。

5. つけ置き洗いの効果を最大化する4つのコツ

いつもの洗濯に「つけ置き洗い」をプラスするだけで、諦めていた汚れや臭いが驚くほどスッキリ落ちることがあります。しかし、ただ時間を置くだけではその効果を十分に引き出せません。ここでは、つけ置き洗いの効果を最大化するための4つの重要なコツを、洗濯のプロが詳しく解説します。少しの手間で仕上がりが格段に変わるので、ぜひ試してみてください。

5.1 コツ1 お湯の温度は40から50度が最適

つけ置き洗いの効果を左右する最も重要な要素が「お湯の温度」です。水でも不可能ではありませんが、ぬるま湯を使うことで洗浄力が飛躍的に向上します。

つけ置きに最適なお湯の温度は、ずばり40℃から50℃です。この温度帯には、汚れを落とすための科学的な理由が2つあります。

  1. 皮脂汚れが溶け出す温度であること: Yシャツの襟袖の黒ずみや黄ばみの主な原因である皮脂汚れは、人間の体温に近い温度では固まっていますが、40℃以上のお湯で溶け出し、浮き上がりやすくなります。
  2. 洗剤の酵素が最も活発に働く温度であること: 多くの洗剤に含まれている「酵素」は、タンパク質や脂質を分解して汚れを落とす働きをします。この酵素が最も効果的に活性化するのが、40℃から50℃の温度帯なのです。

ただし、衣類によっては高温が苦手なものもあります。ウールやシルクなどのデリケートな素材や、色落ちが心配な衣類は、洗濯表示を確認し「30」や「40」といった表示の上限温度を守るようにしましょう。温度計がない場合は、お風呂の残り湯(沸かし直していない状態)が40℃前後の目安になります。

5.2 コツ2 洗剤や漂白剤を正しく選ぶ

落としたい汚れの種類に合わせて洗剤や漂白剤を使い分けることで、つけ置き洗いの効果はさらに高まります。それぞれの特徴を理解して、最適なものを選びましょう。

5.2.1 粉末洗剤と液体洗剤の違い

普段何気なく使っている洗剤ですが、粉末タイプと液体タイプでは性質が異なります。つけ置き洗いでは、洗浄力の高い「粉末洗剤」が基本的にはおすすめです。

それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

種類 主な性質 得意な汚れ つけ置きでのポイント
粉末洗剤 弱アルカリ性 皮脂汚れ、泥汚れ、食べこぼし、油シミ 洗浄力が高く、頑固な汚れのつけ置きに最適。酵素や漂白剤配合のものが多い。溶け残りに注意が必要。
液体洗剤 中性 軽い皮脂汚れ、化粧品など 水に溶けやすく、繊維に優しい。おしゃれ着などデリケートな衣類のつけ置きに向いている。

このように、Yシャツの襟袖の黒ずみや靴下の泥汚れといった頑固な汚れには弱アルカリ性の粉末洗剤を、大切なおしゃれ着には中性の液体洗剤を選ぶのが正解です。

5.2.2 酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)の活用

通常の洗剤だけでは落としきれない黄ばみや黒ずみ、染み付いた汗の臭いには、「酸素系漂白剤」の併用が絶大な効果を発揮します。代表的な製品に「オキシクリーン」や「ワイドハイター PRO」などがあります。

酸素系漂白剤は、色柄物にも安心して使えるのが最大のメリットです。主成分の過炭酸ナトリウムがお湯に溶けることで酸素の泡を発生させ、その力で汚れを分解・漂白し、さらに除菌・消臭効果も期待できます。洗剤と一緒に適量を溶かして使うだけで、衣類をスッキリとリフレッシュさせることができます。

注意点として、「塩素系漂白剤」とは異なり、酸性のものと混ぜても有毒ガスは発生しませんが、ウールやシルクなどの動物性繊維や金属製の付属品(ボタンやファスナー)が付いた衣類には使えない場合があるため、必ず衣類の洗濯表示と漂白剤の注意書きを確認してください。

参考: 花王株式会社 ワイドハイター PRO 粉末タイプ

5.2.3 固形石鹸(ウタマロ石けんなど)との併用

つけ置き前の「ひと手間」で、仕上がりに大きな差がつくのが固形石鹸による予洗いです。特に、泥汚れや食べこぼしのシミ、襟袖の頑固な黒ずみなど、ピンポイントで落としたい汚れには「ウタマロ石けん」などの部分洗い用固形石鹸が非常に有効です。

使い方は簡単です。

  1. 汚れた部分をぬるま湯で濡らす。
  2. 固形石鹸を直接汚れに塗り込む。
  3. 汚れと石鹸をなじませるように、軽くもみ洗いする。
  4. すすがずに、そのまま洗剤を溶かしたつけ置き液に投入する。

この予洗いを行うことで、石鹸の成分が汚れに直接作用し、つけ置き中にも汚れが分解されやすくなります。つけ置きだけでは不安な頑固な汚れがある場合に、ぜひ取り入れたいテクニックです。

5.3 コツ3 洗剤はしっかり溶かしてから衣類を入れる

意外と見落としがちなのが、洗剤を溶かすタイミングです。衣類を入れた上から洗剤を振りかけたり、溶け残りがある状態でつけ置きを始めたりするのはNGです。

必ず、衣類を入れる前に洗剤と漂白剤をぬるま湯で完全に溶かしきってください。

洗剤が溶け残ったまま衣類に付着すると、その部分だけ濃度が極端に高くなり、生地を傷めたり、色落ちさせたりする「洗剤焼け」の原因になります。また、洗浄成分が均一に広がらないため、洗いムラができてしまい、つけ置きの効果が半減してしまいます。

特に粉末洗剤は溶け残りが起きやすいので、桶に洗剤を入れたら、まず少量のぬるま湯を注いでペースト状になるまでよくかき混ぜ、その後で規定量のぬるま湯を足していくと、ダマにならず綺麗に溶かすことができます。

5.4 コツ4 つけ置き後は他の洗濯物と一緒に洗濯機へ

つけ置きが終わった後の衣類は、汚れが分解されて浮き出た状態です。この汚れをしっかりと洗い流すために、洗濯機で仕上げ洗いをします。

つけ置き後の衣類は、軽く絞って水気を切ってから洗濯機に移しましょう。このとき、汚れが溶け出したつけ置き液は、基本的に捨ててください。節水のために再利用したくなるかもしれませんが、この液には剥がれ落ちた汚れや雑菌が大量に含まれています。そのまま使うと、一度落ちた汚れが他の洗濯物に再び付着する「逆汚染」を引き起こし、臭いの原因になる可能性があります。

洗濯機に入れたら、他の洗濯物と一緒に通常のコース(洗い→すすぎ→脱水)で洗って問題ありません。洗剤も、洗濯機に入れる全体の洗濯物量に合わせた規定量を追加してください。この一手間が、清潔で爽やかな仕上がりを実現します。

6. プロが教える正しいつけ置き洗いの基本手順

つけ置き洗いは、ただ衣類を洗剤液に浸しておくだけ、と思っていませんか?実は、いくつかのポイントを押さえるだけで、その効果は劇的に変わります。ここでは、誰でも簡単に実践できる、洗浄効果を最大限に引き出すための正しい手順を4つのステップで詳しく解説します。

6.1 ステップ1 必要なものを用意する

まずはじめに、つけ置き洗いに必要なアイテムを揃えましょう。特別なものは必要なく、ご家庭にあるもので十分対応できます。

  • 洗い桶やバケツ: 衣類がゆったりと浸かる大きさのものを用意します。洗面台のシンクや洗濯槽を代用することも可能です。
  • 洗剤: 汚れの種類に合わせて選びます。皮脂や油汚れには洗浄力の高い粉末洗剤、デリケートな衣類には液体洗剤がおすすめです。
  • 漂白剤(任意): 黄ばみや頑固なシミには、色柄物にも使える酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)を併用すると効果的です。
  • 計量スプーンやカップ: 洗剤や漂白剤を正しく計量するために必要です。
  • ゴム手袋: 洗剤による手荒れを防ぐために着用を推奨します。

6.2 ステップ2 洗い桶にぬるま湯と洗剤を入れる

準備が整ったら、洗浄液を作ります。この工程でのポイントは「お湯の温度」と「洗剤をしっかり溶かすこと」です。

まず、洗い桶に40℃から50℃のぬるま湯を入れます。この温度帯は、洗剤に含まれる酵素が最も活発に働き、皮脂などの油汚れを効率よく分解してくれる最適な温度です。

次にお湯に洗剤を投入し、手や泡立て器などでよくかき混ぜて、粉末や顆粒が完全に見えなくなるまでしっかりと溶かしてください。洗剤の溶け残りは、洗浄ムラの原因になるだけでなく、衣類に洗剤が残留して肌トラブルを引き起こす可能性もあります。

洗剤の量は、使用する製品のパッケージに記載されている「つけ置き洗い」の推奨量に従うのが基本です。記載がない場合は、以下の表を目安にしてください。

水の量 洗剤の目安(一般的な粉末洗剤の場合)
5L 約5g(小さじ1杯程度)
10L 約10g(小さじ2杯程度)

※上記はあくまで目安です。正確な量は各洗剤メーカーの指示をご確認ください。参考: 花王 アタック「つけおき洗いの方法」

6.3 ステップ3 衣類を浸して放置する

洗浄液が完成したら、いよいよ衣類を浸します。ここでも効果を高めるためのコツがあります。

Yシャツの襟袖の黒ずみや、食べこぼしのシミなど、特に汚れが気になる部分が洗浄液にしっかりと浸かるように、衣類を畳んでから沈めましょう。衣類が浮いてきてしまう場合は、水を入れたペットボトルなどを重しにするか、時々上下を返すのがおすすめです。

衣類全体が洗浄液に浸かったことを確認したら、そのまま放置します。前の章で解説した通り、つけ置き時間は汚れの程度に応じて調整しますが、基本は30分から2時間程度が目安です。これ以上長く置くと、剥がれた汚れが再び衣類に付着する「逆汚染」や雑菌繁殖のリスクが高まるため注意しましょう。

6.4 ステップ4 軽くすすいで洗濯機で洗う

つけ置き時間が経過したら、最後の仕上げです。洗浄液には汚れがたくさん溶け出しているため、そのまま洗濯機に入れるのは避けましょう。

つけ置きした衣類を桶から取り出し、汚れた洗浄液を捨ててから、軽く水ですすいでください。ゴシゴシこする必要はなく、洗浄液のぬめりや色を軽く落とす程度で十分です。このひと手間が、他の洗濯物への汚れ移りを防ぎ、すっきりとした洗い上がりに繋がります。

軽くすすいだ後は、他の洗濯物と一緒に洗濯機に入れ、通常のコースで洗濯します。つけ置きで大半の汚れは浮き上がっているため、洗濯機で仕上げ洗いをすることで、繊維の奥の汚れまでしっかりと落とすことができます。洗い終わったら、すぐに風通しの良い場所で干し、生乾き臭を防ぎましょう。

7. つけ置き洗いに関するよくある質問

つけ置き洗いをしていると、「このやり方で本当に合ってる?」と疑問に思うこともありますよね。ここでは、多くの方が抱えるつけ置き洗いに関するよくある質問に、洗濯のプロがお答えします。

7.1 Q. つけ置き洗いした後の水はそのまま使っていい?

結論から言うと、つけ置き洗いに使った後の水(つけ置き液)は、再利用せずに捨てるのが正解です。

節水のためにそのまま洗濯に使いたくなる気持ちも分かりますが、それは避けるべきです。つけ置き液には、衣類から溶け出した皮脂や汗、泥、食べこぼしなどの汚れが大量に含まれています。また、雑菌も繁殖している可能性があります。

この汚れた水で他の洗濯物を洗うと、一度落ちた汚れが再び別の衣類に付着してしまう「逆汚染(再汚染)」という現象が起こります。逆汚染は、衣類全体の黒ずみやくすみ、嫌な臭いの原因となり、せっかくの洗濯が逆効果になってしまいます。

つけ置きした衣類は、軽く水気を切ってから、他の洗濯物と一緒に洗濯機に入れ、新しい水と洗剤で洗いましょう。これが、衣類を最もきれいに仕上げるための正しい手順です。

7.2 Q. 一晩つけ置きするのはダメ?

基本的に、一晩中つけ置きするのはおすすめできません。汚れがひどいと、つい長く置きたくなりますが、長時間のつけ置きには多くのデメリットが伴います。

  • 雑菌の繁殖: つけ置き開始時はお湯でも、時間が経つにつれて水温が下がります。雑菌が最も繁殖しやすい20~40℃の温度帯が長く続くことになり、生乾き臭のような嫌な臭いの原因菌を増やしてしまいます。
  • 汚れの再付着(逆汚染): 上記の質問でも触れた通り、一度水に溶け出した汚れが、時間が経つことで再び繊維に戻ってしまい、かえって衣類を汚してしまう可能性があります。
  • 生地へのダメージ: 衣類を長時間水に浸すことは、繊維に大きな負担をかけます。特にデリケートな素材や色柄物は、型崩れや縮み、色落ち、色移りのリスクが格段に高まります。

つけ置き洗いの時間は、この記事で解説している通り、30分から長くても2時間程度を目安にしてください。もし、酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)を使用して漂白を目的とする場合は、製品のパッケージに記載されている推奨時間を確認し、それに従いましょう。例えば、オキシクリーン公式サイトでは、最大6時間までのつけ置きが推奨されていますが、これはあくまで漂白目的の場合です。通常の皮脂汚れなどを落とすための「つけ置き洗い」とは区別して考えましょう。

7.3 Q. 洗濯機でつけ置きしてもいい?

お使いの洗濯機に「つけおきコース」が搭載されていれば、ぜひ活用しましょう。洗い桶を準備する手間が省け、つけ置きから本洗い、すすぎ、脱水までを自動で行ってくれるため非常に便利です。

もし「つけおきコース」がない場合でも、洗濯槽を使ってつけ置きすること自体は可能です。ただし、いくつか注意点があります。洗い桶(バケツ)で行う場合とのメリット・デメリットを比較してみましょう。

方法 メリット デメリット
洗い桶(バケツ)
  • 少量の衣類を手軽につけ置きできる
  • つけ置き中も洗濯機を自由に使える
  • 汚れのひどいものだけを隔離できる
  • お湯を準備したり運んだりする手間がかかる
  • つけ置き後に衣類を洗濯機に移す必要がある
  • 大きなもの(シーツなど)には向かない
洗濯機
  • 洗い桶が不要で、そのまま洗濯できる
  • 大きなものや複数の衣類を一度につけ置きできる
  • 「つけおきコース」なら全自動で楽
  • つけ置き中は他の洗濯ができない
  • 洗濯槽の衛生状態が衣類に影響する
  • コースがない場合、手動での操作(一時停止など)が必要

「つけおきコース」がない洗濯機でつけ置き洗いをする場合は、洗濯槽にぬるま湯と洗剤、衣類を入れ、「洗い」で数分間運転して洗剤を溶かした後に一時停止し、30分~2時間ほど放置します。その後、電源を入れ直し、標準コースで通常通り洗濯してください。ただし、長時間のつけ置きは洗濯槽の傷みや故障の原因になる可能性もあるため、必ずお使いの洗濯機の取扱説明書を確認してから行いましょう。

8. まとめ

つけ置き洗いで衣類を置く時間は、30分から2時間が基本です。長時間のつけ置きは、一度落ちた汚れが再び衣類に付着したり、雑菌が繁殖して臭いの原因になったりするため逆効果です。汚れの種類や衣類に合わせて時間を調整し、40~50℃のお湯と適切な洗剤を使うことで効果は最大化します。この記事で解説した正しい方法を実践し、諦めていた頑固な汚れもすっきり落としましょう。