ダッフルコートは海軍由来って本当?ルーツを知れば着こなしが変わる
ダッフルコートは海軍由来って本当?ルーツを知れば着こなしが変わる
冬の定番アウターとして親しまれているダッフルコートですが、「海軍由来」という噂を聞いてその真偽や歴史的背景が気になっている方も多いのではないでしょうか。結論から申し上げますと、ダッフルコートがイギリス海軍(ロイヤルネイビー)の防寒着として採用され、第二次世界大戦を経て世界中に広まったというのは紛れもない事実です。
しかし、その起源をさらに遡ると、実はベルギーの漁師たちが愛用していた作業着にたどり着きます。なぜ漁師の服が軍服となり、現在のファッションアイテムへと進化したのでしょうか。その歴史を知ることで、手袋をしたままでも留めやすいトグルボタンや、帽子の上から被れる大きなフードといった独特なディテールに込められた機能的な意味を深く理解することができます。
本記事では、ダッフルコートが海軍由来と言われる理由とそのルーツ、軍用品ならではの機能美について詳しく解説します。あわせて、グローバーオールやモンゴメリーといった本格派ブランドの紹介や、歴史的背景を踏まえた大人の着こなし術も提案しています。由来を知ることで、単なる防寒具ではないダッフルコートの魅力を再発見し、ワンランク上の選び方やコーディネートを楽しめるようになるでしょう。
1. ダッフルコートは海軍由来というのは事実
冬の定番アウターとして親しまれているダッフルコートですが、そのルーツを辿ると、ファッションアイテムとしてではなく、過酷な環境下で命を守るための軍用品として誕生した歴史があります。 一般的に「ダッフルコートは海軍由来」と言われることがありますが、これは紛れもない事実です。 北海の極寒や荒波に晒される兵士たちを温めるために開発されたこのコートは、その高い機能性と耐久性が評価され、イギリス海軍(ロイヤルネイビー)の制式装備として採用されました。 現在私たちが街着として着用しているデザインの多くは、当時の軍用スペックをベースに、より着やすく改良されたものです。 ここでは、ダッフルコートがどのようにして海軍の象徴的なコートとなり、世界中に広まっていったのか、その歴史的背景を紐解いていきます。
1.1 イギリス海軍ロイヤルネイビーでの採用
ダッフルコートがイギリス海軍(ロイヤルネイビー)で正式に採用されたのは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのことだと言われています。 当時、イギリス海軍は世界中の海で活動しており、特に冬の北大西洋や北海での任務は、凍てつくような寒さと冷たい海水との戦いでした。 そこで求められたのが、厚手のウール素材で作られ、海水を含んでも保温性を失わず、かつ動きやすい防寒着です。 この要求に応える形で採用されたのが、ベルギーのダッフル地方で作られていた粗野なウール生地を用いたコート、すなわちダッフルコートでした。
初期のダッフルコートは、個人の所有物ではなく、艦艇ごとの備品として管理され、当直任務に就く兵士へ貸し出されるウォッチコート(当直用外套)としての役割を担っていました。 そのため、誰でも着られるように極めてゆったりとしたサイズ感で作られており、制服の上からガバっと羽織ることができました。 また、第二次世界大戦中には、大西洋で輸送船団を護衛する任務(コンボイ・エスコート)に従事する兵士たちが着用していたことから、別名コンボイコートとも呼ばれていました。 この名称は、ダッフルコートが単なる防寒着以上に、兵士たちの命を繋ぐ重要な装備であったことを物語っています。
| 年代 | 出来事・状況 | 主な役割・名称 |
|---|---|---|
| 1890年代頃 | イギリス海軍による試験的な採用開始 | 艦上での防寒作業着 |
| 第一次世界大戦 | 一部の部隊で使用される | 極寒地でのウォッチコート |
| 第二次世界大戦 | 全軍への普及と標準化 | コンボイコート、モンティコート |
| 1950年代以降 | 軍の余剰在庫(サープラス)が市場へ | 一般市民への普及、ファッション化 |
1.2 第二次世界大戦で広まった防寒着としての役割
ダッフルコートの名を一躍世界に知らしめたのは、第二次世界大戦での広範な使用です。 この大戦において、ダッフルコートはイギリス海軍だけでなく、陸軍の特殊空挺部隊(SAS)などでも採用され、連合国軍の兵士たちにとって欠かせない防寒装備となりました。 特に有名なのが、ノルマンディー上陸作戦の総指揮官を務めたイギリス陸軍のバーナード・ロー・モンゴメリー元帥の存在です。 彼は軍の規定に縛られず、自身のトレードマークとしてダッフルコートを愛用し、戦場でも常に着用していました。 その姿は多くの兵士や市民の目に焼き付き、ダッフルコートは彼の愛称である「モンティ」にちなんでモンティコートとも呼ばれるようになりました。
当時のモデルは、現在市販されているものよりも着丈が長く、身幅も非常に広いのが特徴でした。 これは、コートを毛布代わりにして仮眠を取ったり、分厚い制服の上からでも動きを妨げずに着用したりするための工夫でした。 また、船上で波を被っても水が浸入しにくいよう、目の詰まったメルトン生地が採用されており、その重厚な作りはまさに「着る道具」と呼ぶにふさわしいものでした。 戦後、軍から大量に放出されたこれらのコートは、その丈夫さと暖かさから一般市民の間で急速に普及し、やがて学生や労働者の冬の定番着として定着していったのです。
2. ダッフルコートの起源はベルギーの漁師町
ダッフルコートといえば、イギリス海軍(ロイヤルネイビー)の象徴的な防寒着として広く知られていますが、そのルーツをさらに遡ると、意外な場所にたどり着きます。実は、ダッフルコートの起源はイギリスではなく、ベルギーのアントワープ近郊にある「ダッフル(Duffel)」という小さな町にあるのです。海軍の制服として採用される以前、このコートは過酷な環境で働く人々のための実用的なワークウェアとして誕生しました。ここでは、その知られざる誕生の背景と、素材に込められた歴史について詳しく解説します。
2.1 ダッフルという地名と粗野なウール素材
「ダッフルコート」という名称は、その発祥の地であるベルギーの都市「ダッフル(Duffel)」に由来しています。中世から繊維産業が盛んだったこの地域では、地元の羊毛を使用した特産品の織物が生産されていました。これが後に「ダッフル生地」と呼ばれるようになる素材です。
当時生産されていたダッフル生地は、現代の私たちが街着として目にする滑らかなメルトンウールとは異なり、非常に肉厚で表面が毛羽立った、粗野な風合いのものでした。この生地は、縮絨(しゅくじゅう)加工を施すことで繊維の密度を極限まで高め、雨や雪を弾く高い撥水性と、強風を通さない優れた防寒性を兼ね備えていたのです。
現代のダッフルコートにも通じる、この伝統的な生地の特性を整理すると以下のようになります。
| 特徴 | 当時のダッフル生地(ファスチアン織り等)の詳細 |
|---|---|
| 素材感 | 油分を多く含んだ未脱脂のウールを使用し、ゴワゴワとした硬い手触りが特徴。 |
| 機能性 | 高密度に織り上げられているため水が浸透しにくく、濡れても保温性が落ちにくい。 |
| 耐久性 | 漁網や機材に引っ掛けても破れにくい、極めて頑丈な構造。 |
| 色合い | 当時は染色技術も未発達で、羊毛本来の色や暗い色調のものが主流だったとされる。 |
このように、ダッフルという地名がついたこの素材は、ファッション性よりも「生存するための機能」に特化したマテリアルでした。この「ダッフル」という言葉は、コートの形そのものではなく、元々はベルギー産のこの特定の生地を指す言葉だったという事実は、服飾史における重要なポイントです。
2.2 漁師の作業着から軍用品へと進化した経緯
ベルギーのダッフル地方で作られたこの強靭なウール生地は、やがて北海などの極寒の海で働く漁師たちの間で評判となります。北欧やオランダ、ベルギー周辺の漁師たちは、凍てつく潮風や波しぶきから身を守るために、この生地を使った防寒着を着用し始めました。これがダッフルコートの原型です。
漁師たちが求めたのは、単なる暖かさだけではありませんでした。揺れる船上で作業を行うため、動きやすさも不可欠です。そのため、初期のダッフルコートは、厚手のセーターや作業着の上からでもざっくりと羽織れるよう、身幅にたっぷりとゆとりを持たせたボックスシルエットで作られていたのです。
また、漁師の作業着としての工夫は、その後の軍用コートへの採用に大きな影響を与えました。例えば、手がかじかむ極寒の中で、分厚い手袋をしたままでも開閉できる留め具の仕組みは、漁師たちの知恵から生まれたものです。この実用本位の設計思想が、後にイギリス海軍の目に留まることになります。
19世紀後半になると、イギリスの衣料品メーカーなどがこの「漁師のコート」に着目し、製品化を進めました。そして、その圧倒的な機能性が評価され、第一次世界大戦の頃から徐々に軍用品としての採用検討が進んでいったのです。つまり、ダッフルコートは海軍がゼロから開発したものではなく、ベルギーの漁師たちの生活の知恵を軍が「発見」し、制式採用したという経緯が正しい歴史と言えるでしょう。
3. 海軍由来だからこその機能的なディテール
ダッフルコートが単なる流行のファッションアイテムではなく、長きにわたって愛され続ける理由は、その完成された機能美にあります。過酷な環境下で任務を遂行するイギリス海軍の兵士たちを守るために考案されたディテールは、すべてにおいて「生存」と「効率」を最優先した合理的な理由が存在します。ここでは、ダッフルコートを象徴する各パーツが、本来どのような役割を担っていたのかを深掘りします。
3.1 手袋をしたまま留められるトグルボタン
ダッフルコートの最大の特徴といえば、フロント部分に並ぶ独特な留め具です。一般的なコートに見られるボタンとボタンホールではなく、「トグル(浮き子)」と呼ばれる円錐状の留め具と、それを引っ掛けるループが採用されています。
この形状が採用された最大の理由は、かじかむ手や分厚い手袋をしたままでも開閉できる操作性にあります。極寒の冬の海、吹き荒れる強風の中で、小さなボタンを穴に通す作業は困難を極めます。手袋を外せば指先は凍え、作業効率も落ちてしまいます。そこで、手先の感覚が鈍っていても、片手で容易に掛け外しができるトグル仕様が考案されました。
初期の軍用品では、素材にも海軍ならではの知恵が詰まっていました。
| 年代・用途 | トグルの素材 | ループの素材 | 採用の理由 |
|---|---|---|---|
| 大戦中の軍用品 | 木製(浮き子) | 麻紐(ロープ) | 船上で入手しやすく、手袋をしていても滑りにくい。海水による腐食がない。 |
| 戦後のタウンユース | 水牛の角 | 革紐 | 高級感と耐久性を重視。現代のダッフルコートの主流。 |
また、トグルは左右どちらの身頃を上にしても留められる構造になっているものが多く、これは風向きに合わせて合わせを変えることで、衣服内への風の侵入を防ぐための工夫でもありました。
3.2 帽子の上から被れる大きなフード
ダッフルコートのフードが、他のアウターに比べて極端に大きく作られていることにお気づきでしょうか。これにも明確な軍事的理由があります。それは、海軍の制帽(将校帽)を被った状態でも頭をすっぽりと覆えるサイズが必要だったからです。
甲板上の監視業務などでは、雨や雪、そして波しぶきが容赦なく降り注ぎます。帽子を脱ぐことなく、そのままフードを被ることで、視界と体温を確保する必要がありました。また、初期のモデルに見られる平らな形状のフードは「パンケーキフード」と呼ばれ、被っていない時に背中にペタリと張り付くように設計されています。これは、強風でフードがバタつき、作業の妨げになるのを防ぐための機能的な形状です。
3.3 風の侵入を防ぐチンストラップとストームパッチ
首元と肩周りにも、冷たい海風を遮断するための重要なディテールが備わっています。
まず、襟元にある「チンストラップ(チンウォーマー)」です。通常は襟の下に隠れていますが、これを留めることで首元の隙間を完全に塞ぎ、マフラーがなくとも首を保温することができます。体温を奪う最大の敵である冷気の侵入をシャットアウトするために不可欠なパーツでした。
次に、肩部分に縫い付けられた補強布である「ストームパッチ(ショルダーヨーク)」です。これは単なるデザインではなく、以下の2つの重要な機能を果たしています。
- 防水性と保温性の向上: 生地を二重にすることで、雨や雪が染み込むのを防ぎ、肩周りの保温性を高めます。
- 耐久性の確保: 重い荷物や機材を肩に担ぐ際、生地が擦り切れるのを防ぐ補強の役割を果たします。
このように、ダッフルコートのあらゆるディテールは、海の上で働く男たちの命を守るための「ギア(道具)」として進化してきました。これらの背景を知ることで、現代のファッションとしての着こなしにも、より一層の深みが生まれるはずです。
4. 由来を知って選ぶ本格派ダッフルコートブランド
ダッフルコートが海軍由来であるという歴史的背景を知ると、単なるファッションアイテムとしてだけでなく、そのルーツに敬意を表した「本物」を手に入れたくなるものです。数あるブランドの中でも、英国海軍との深い関わりを持ち、確かな品質と歴史を誇る2つの老舗ブランドをご紹介します。これらは、流行に左右されず一生モノとして愛用できる名品です。
4.1 ダッフルコートの代名詞グローバーオール
「ダッフルコートといえばグローバーオール」と言われるほど、世界的な知名度と信頼を誇るのがイギリスのブランドGloverall(グローバーオール)です。その歴史は、第二次世界大戦後に英国国防省から「不要になった軍用ダッフルコートの処分」を依頼されたことから始まりました。
もともと手袋(Glove)とオーバーオール(Overall)を扱う卸売業者だった創業者のモリス・ファミリーは、放出された軍用品を民間に販売したところ、瞬く間に完売するという成功を収めます。これを機に、彼らは自社でダッフルコートの生産を開始し、社名を「Gloverall」と改めました。彼らの最大の功績は、無骨な軍用品だったダッフルコートを、タウンユースにも馴染む洗練されたファッションアイテムへと昇華させたことにあります。
特に注目すべきは、創業当時の海軍仕様を忠実に再現したモデル「MONTY(モンティ)」です。愛用者であったモンゴメリー元帥の愛称から名付けられたこのモデルは、手袋をしたままでも扱いやすい木製のトグルと麻紐のループを採用しており、当時の荒々しくも機能的なディテールを色濃く残しています。一方で、より現代的なモデルでは水牛の角(ホーン)のトグルと革紐を採用し、高級感を演出しています。
4.2 最古の歴史を持つモンゴメリー
グローバーオールと並び称されるもう一つの雄が、Montgomery(モンゴメリー)です。日本では知る人ぞ知る存在ですが、その起源は1896年にまで遡り、現存する最古のダッフルコートメーカーとして知られています。
かつては「Ideal Clothing Company」や「Tibbett(チベット)」という社名で活動しており、英国海軍がダッフルコートを制式採用する際の開発と供給に深く関わっていました。ブランド名は、ノルマンディー上陸作戦の総指揮官であり、ダッフルコートをトレードマークとしていたバーナード・モンゴメリー元帥に由来します。ブランド誕生100周年を記念して、彼の功績と愛着に敬意を表し、現在のブランド名へと変更されました。
モンゴメリーのコートは、海軍由来の質実剛健さを色濃く残しており、肉厚で重厚なメルトンウール生地が特徴です。伝統的なカッティングと縫製技術により、着るほどに体に馴染む経年変化を楽しむことができます。歴史的ルーツと正統性を最も重視する方にとって、これ以上の選択肢はないと言えるでしょう。
| ブランド名 | 創業・歴史的背景 | 海軍との関わり | 特徴・選び方のポイント |
|---|---|---|---|
| Gloverall (グローバーオール) |
1951年創業 軍用品の放出品販売からスタート |
戦後の余剰在庫を民間に普及させた立役者 | 知名度No.1の王道ブランド モデルにより「海軍仕様の再現」と「都会的な洗練」を選べる |
| Montgomery (モンゴメリー) |
1896年創業 旧チベット社などを含む最古の系譜 |
海軍向けに原型を開発・供給したオリジネーター | 通好みの本格派ブランド クラシックな素材感と重厚な作りを好む人向け |
どちらのブランドも、安価な大量生産品とは一線を画す耐久性と保温性を備えています。海軍由来の武骨な「モンティ」モデルでルーツを感じるか、あるいは洗練された定番モデルで大人の品格を演出するか。ご自身のスタイルに合わせて、長く付き合える一着を選んでみてください。
5. 海軍ルーツを意識した大人の着こなし術
ダッフルコートが持つ海軍由来の背景を知ることは、単なる防寒着としてではなく、歴史と物語を纏うファッションアイテムとして楽しむための第一歩です。過酷な海上で命を守るために生まれた機能美は、現代のスタイリングにおいても力強い説得力を持ちます。海軍ルーツを尊重しつつ現代的にアップデートした着こなしを取り入れることで、流行に左右されない大人の品格を演出することが可能です。ここでは、そのルーツを活かした2つの主要なスタイリングアプローチを解説します。
5.1 トラッドな雰囲気を作るアイビールック
第二次世界大戦後、軍の放出品(サープラス)として大量に市場へ出回ったダッフルコートは、安価で丈夫な防寒着として英国や米国の学生たちの間で爆発的に普及しました。特にアメリカ東海岸のアイビーリーグの学生たちは、この無骨なコートを洗練されたキャンパスウェアとして昇華させました。この歴史的背景を踏まえた「アイビールック」は、ダッフルコートの最も正統派な着こなしの一つです。
アイビースタイルを構築する際は、清潔感のあるシャツやニットを合わせ、知的な印象を与えることが重要です。海軍由来のネイビーや、学生たちに愛されたキャメルカラーのダッフルコートを主役に、ベーシックなアイテムを丁寧に重ね着することで、育ちの良さと伝統を感じさせるスタイルが完成します。
| カテゴリ | 推奨アイテム | 着こなしのポイント |
|---|---|---|
| インナー | オックスフォードシャツ シェットランドセーター |
シャツの襟元を少し見せることで立体感を演出します。ニットは発色の良い色を選ぶとアクセントになります。 |
| ボトムス | チノパン グレンチェックのスラックス |
細すぎず太すぎないストレートシルエットを選び、裾はダブル仕上げにするとよりトラッドな印象になります。 |
| シューズ | コインローファー ウィングチップシューズ |
レザーシューズを合わせることで、ダッフルコートのカジュアルさを引き締め、全体のバランスを整えます。 |
このように、当時の学生たちが軍用品を日常着として取り入れたように、あえてスラックスや革靴といったドレスライクなアイテムと合わせることで、ダッフルコートの粗野な素材感が引き立ちます。大人のアイビールックでは、サイズ感も重要です。極端なオーバーサイズは避け、ジャケットの上から羽織っても窮屈に見えないジャストサイズを選ぶことで、時代を超越したスタンダードな魅力を表現できます。
5.2 ミリタリーテイストを取り入れたカジュアルコーデ
もう一つのアプローチは、ダッフルコートの起源である「イギリス海軍(ロイヤルネイビー)」のテイストを直球で表現するミリタリースタイルです。ただし、全身を軍モノで固めてしまうとコスプレのように見えてしまう危険性があります。現代的な大人の着こなしとして成立させるためには、色使いや素材感でミリタリーのニュアンスを取り入れつつ、都会的に洗練させるバランス感覚が求められます。
特に参考にしたいのが、第二次世界大戦中のイギリス陸軍元帥バーナード・モンゴメリーの着こなしです。彼はダッフルコートの愛用者として知られ、そのアイコニックな姿からダッフルコート自体が「モンティコート」と呼ばれることもあります。彼のようにタートルネックのセーターやベレー帽を合わせるスタイルは、防寒性を高めるだけでなく、規律ある大人の男性像を演出するのに最適です。
| ベースカラー | 合わせる色 | スタイリングのイメージ |
|---|---|---|
| ネイビー (濃紺) |
ホワイト グレー |
ロイヤルネイビーの正統派スタイル インナーに白のタートルネックを合わせることで、海軍士官のような清潔感と威厳を表現します。最も失敗が少なく、誰にでも似合う王道の配色です。 |
| オリーブ (カーキ) |
ブラック ダークブラウン |
無骨さを強調したフィールドスタイル ミリタリー由来の土臭さを活かしつつ、ブラックのパンツやブーツで引き締めることで、都会的でモダンな印象に仕上げます。 |
| ブラック (黒) |
インディゴブルー チャコール |
現代的に解釈したモードミリタリー 色味を抑えたモノトーンに近い組み合わせに、リジッドデニムなどを合わせることで、重厚感のあるシックな大人の休日スタイルを作ります。 |
ミリタリーテイストを取り入れる際は、ボトムスにカーゴパンツを選ぶのも一つの手ですが、その場合はシルエットが綺麗なテーパードタイプを選ぶなどして野暮ったさを回避しましょう。また、足元には英国製のカントリーブーツやサイドゴアブーツを合わせると、ルーツである英国の雰囲気とマッチし、全体の格が上がります。機能性を追求したディテールを持つダッフルコートだからこそ、実用的なアイテムとの相性は抜群です。歴史的背景を理解した上でアイテムを選び抜くことこそが、大人のファッションの醍醐味と言えるでしょう。
6. まとめ
ダッフルコートが「海軍由来」であることは紛れもない事実であり、第二次世界大戦中にイギリス海軍(ロイヤルネイビー)が防寒着として採用したことで世界的に普及しました。しかし、そのさらに奥深いルーツを辿ると、ベルギーの「デュフェル(ダッフル)」という町の漁師たちが着用していた、粗野なウール素材の作業着に行き着きます。
手袋をしたままでも開閉できるトグルボタンや、帽子の上から被れる大きなフード、風を防ぐチンストラップといった特徴的なディテールは、単なるファッションデザインではなく、極寒の海上で活動するための「機能美」として生まれたものです。こうした背景を知ることで、グローバーオールやモンゴメリーといった本格派ブランドが持つ歴史的な価値をより深く理解できるでしょう。
ミリタリーとワークウェア、両方の歴史を持つダッフルコート。その起源に思いを馳せながら、トラッドなアイビールックや大人のカジュアルスタイルに取り入れて、冬のファッションをより豊かに楽しんでみてください。

